この個体差というのは、例えば体形も違えば食べる量も違う、痩せていてもたくさん食べれる人もいて、すべて一人一人違うというような意味合いで、長く生きていると当たり前のように実感していることと思います。
ところが実際には、なかなか当たり前になっていないことが多くて、先入観やこうあって欲しいという人の欲望によって歪められて見ていることが多いと思われます。なぜこの話を書こうと思ったかというと、最近ワクチンのことがもっぱらの話題に上がっていますが、12歳以下への接種も海外では始まっている所もあり、大人と同じ量でいいのかというのが検証、議論されています。また日本でもワクチンできつい副反応が出るのは20代30代の女性で特に小柄な人がきついというのが出ています。それで元々欧米人に合わせて作られたワクチンだからそもそも日本人には多いのではないかというのは最初から言われてました。今のところはっきりと結論は出ていないようですが、このことは当然考えないといけないことだと思います。
何が言いたいかというと、この個体差というのは非常に科学者にとって悩ましい問題で、もし仮に体格や血液の量、血液のpHなど様々なことを考慮して摂取量を変えないといけないとなったら、とてもじゃないけど摂取は先に進まないわけですから、このことはある程度考慮するにしても一律でやるしかないというのが本音だと思います。これはなにもワクチンに限ったことではありません。言い出したらきりがありませんが、皆さんに直接関わることでいうと、「血圧の数値問題」や「骨格の歪みと痛み」などが分かりやすいと思います。
まず血圧の数値については、昔は年齢に90を足した数字がその人の正常血圧の目安でした。つまり70歳の人であれば、70+90で血圧の上の値が160くらいなら問題ないでしょうとなっていました。それがこの20年で何度も基準が変更されて、現在では130以上は少し気をつけましょうみたいになってきました。日本高血圧学会が出している高血圧治療のガイドラインではものすごく細かくレベルを分けて基準が書いてあり、診察室と家庭での測定によっても基準値が分けて書いてあります。正常は上が120以下、下が80以下としていますが、これをそのまま実際に当てはめてしまえば、とんでもないことになるのは誰でもわかると思います。とにかくここには個体差が反映されていません。誰でも彼でも血圧降下剤でこの基準値に近づけようとするのが、近年ますます行われるようになっています。果たして本当にそれで人の健康が保たれるのでしょうか?詳しくは改めて書きたいと思いますが、年齢とともに血管は硬くなり毛細血管も収縮してくるので、圧力が上がるのは普通のことだと言えます。これを無理やりなんでもかんでも下げることに疑問が出るのは当然でしょう。僕が鍼灸師として臨床を始めて3年くらいした時には、もしかして血圧の下げすぎで余計な病気を作ってるんじゃないだろうか、認知症の人が激増しているのと何か関係があるのではないだろうかと思い始めました。それから十年以上過ぎて、この2、3年で血圧を下げてはいけないとか認知症になるとかいう本がどんどん出るようになってきました。
東洋医学の治療家が気づく程度のことをなぜ現代医学は気づかなかったのかということは、様々な問題があり、当然お医者さんの中にははなから学会のことを無視している人もいるわけで、気づいてないということではありません。こういう正解のないことに対して基準はあってもいいですが、闇雲に当てはめてしまうのはあまりに危険ですし、それこそ医学や医術を愚弄していると言われてもしかたありません。この辺のことは長くなるので省きますが、いずれにせよ個体差というのは考慮するのは当たり前だけど、これを言い出したら非常に難しくなるので目をつぶっている部分があるというのが現実です。
また骨格の歪みについても、画像検査でヘルニアや脊柱管狭窄症ですと言われても、症状がほとんどない人もいますし、一時期は痛みや痺れが酷かったが、今は楽になった。でも画像では何も変わっていないということはよくあります。本当に骨の歪みが問題であれば、それが変わらない限り症状はよくならないことになりますが、実際にはそうなっていないことの方が多いのです。これについても現代医学ではわからないと言わずに、スルーしているというか個体差をなかったことにしているように見えてしまいます。
今問題になっているワクチンにしてもそうですが、分からない部分や分からない現象はつきものですから、口で安全ですとか、大丈夫です、ばかり言うのはあまりにも無責任です。この個体差や、もっと言えば人生に起こる出来事は誰にもわからないことですから、とにかく謙虚になって、誠実に説明し対応するしかないと思います。
東洋医学の良いところは、この個体差を重視しているというか、すべて個別対応というくらいに考えていることです。同じ病名がついている人でもすべて体は違います。それを細かく観察、診断してそれに対応していくということをずっとやっているわけです。ですから一人一人真剣に診まるのは当然ですが、様々な人に対応していくというのは非常に難しく、結果の出ないこともありますが、現代医学では全く改善しなかったものが、僕のようなちっぽけな鍼灸師でも改善できることがあるわけなんです。